大判カメラの選択法

玉田 勇


大判カメラの選択法


どこで使うか

 大判カメラには、屋外用のフィールド・タイプと屋内用のスタジオ・タイプがある。フィールド・タイプは携帯性を重視した設計。軽量でコンパクトに折りたためる方式のボディーを採用している。スタジオ・タイプに比べると機構的にはシンプルだが、アオリなどの諸機能に不便を感じるようなことはない。金属製と木製がある。スタジオ・タイプは屋内用として機能を重視した設計になっているので、大きくて重く、屋外での撮影には適さない。1本のレールをベースにした構造のものが多く、モノレール・タイプとも呼んでいる。多数のアクセサリー類があってシステム化され、あらゆる撮影局面に対応できるような多機能型で、各操作部がデリケートに調整できるのが特徴。一般的にスタジオ・タイプを屋外で使うよりは、フィールド・タイプを屋内で使うほうがリスクが少ない。何を撮るか...ということにつながるが、カメラは使う場所を考えて選ぶことが大切である。


何を撮るか

 風景写真を撮るのなら、携帯性に優れたフィールド・タイプを選ぶべきだ。構造がシンプルなだけ操作も単純明快。刻々と変わる自然に、素早く対応することができるので、思いがけない失敗も防ぐことができる。また、カメラを担いで歩き回ることを考えたら、重いカメラは敬遠したほうがよい。体力にもよるが、とくに、山岳写真には1gでも軽いほうがよい。静物写真を撮るのなら、室内はもちろん屋外でも、きっちりとアオリで形を整えて撮るようなときは、スタジオ・タイプのほうがよい。前枠・後枠部とも微動装置のあるアオリ機構があり、デリケートな調節ができるし、各アオリの大きさを目盛りで読み取ることもできる。


どんなレンズを使いたいか

 大判カメラ用レンズは、焦点距離の長いレンズ、短いレンズ、焦点距離が同じでも、明るいレンズと暗いレンズといろいろだ。同じようなスペックでも銘柄の違ったものなど、小型カメラとは比べものにならないほど種類が多い。このなかで、使いたいレンズの焦点距離は何mmから何mmぐらいまでで、それが使えるかどうかを、チェックする必要がある。小型カメラでは,マウントが合うレンズなら、どれでも使うことができる。しかし、大判カメラでは蛇腹が小型カメラ用レンズの鏡胴の役割をするので、蛇腹の伸びる範囲で使えるレンズが決まってしまうからである。大判カメラ用レンズには、それぞれフランジ焦点距離またはフランジバックという固有の数値がある。これはレンズのカメラへの取り付け面からピントグラスまでの距離を示す数字で、無限遠にピントを合わせたときの距離を表す。したがって、使いたいレンズのフランジ焦点距離が、カメラの蛇腹の伸縮できる範囲に入っていないと使うことができない。

実際には、カメラの繰り出しを最大にしたときに、カメラのフランジバックがレンズのフランジ焦点距離+焦点距離の10分の1以上ないと使えない。また、繰り出しをもっとも縮めたときのフランジバックより短いフランジ焦点距離のレンズは使うことができない。さらにカメラ前枠のレンズが入る穴の直径や、レンズボードの大きさ、蛇腹の太さなども重要なチェックポイントだ。いずれも小さいと、使えるレンズが限られることになる。カメラのフランジバックは、一般的には4x5判では最短65mm以下、最長300mm以上。5x7判では最短90mm以下、最長500mm以上。8x10判では最短120mm以下、最長600mm以上はほしい。ちなみに、大判用レンズで最も焦点距離の長いレンズはニッコールのTED1200mm(テレタイプ)だが、このレンズは、フランジバックが800mm以上あるカメラでないと使うことはできない。


もう一つの選び方

 大判カメラはどんな機種でも、同じレンズを使うことができる。フィルムホルダーも、もちろん共通である。となるとボディーは写真を撮るということでは、レンズ部とフィルム部をつなぐ単なる箱にすぎないということになる。もし、同じレンズ、フィルムホルダー、フィルムを使い、カメラを変えて同じ被写体を撮り分けたとしよう。出来上がった写真を見分けることは不可能なはずである。操作性には若干の違いはあるとしても、カメラによって写真の出来が変わるということはほとんどない。高いカメラ・イコール・よく写るカメラ、という公式はなりたたない。実際は、すべて撮り手の腕次第ということなのである。とはいっても名機を持つのは気分のいいものである。なんとなくよい写真が撮れそうな気になる。大判カメラには、金属製もあれば木製もある。価格も、数万円のモノから百数十万円のモノまである。重量も、使い勝手もさまざまである。よくあるQ&A。「どのカメラを買ったらいいですか?」「そうですネ、カメラはなんでもいいですヨ。写せないということはありませんから...。ご自分の金力と筋力に相談して決めてください」。


アオリつきの中判カメラ

 ブローニーフィルムを使うアオリつきカメラがある。シートフィルムを使うより経済的、露出を変えながら何枚かを素早く撮ることが出来る、フィルムを詰めかえる手間がはぶけるなどの理由で、使いたいという意見がある。しかし、大は小を兼ねる、ということわざではないが、ほとんどの大判カメラが、そのカメラの画面より小さい画面サイズはすべて撮れるようなアクセサリー類をもっている。簡単にサイズ・ダウンができるのだ。今後も、絶対に大判は撮らない、という人でも、せめて4x5判カメラを買うことをすすめたい。後悔しないために。


三脚は何を選ぶか

 大判カメラは、三脚がなければ撮影することができない。必需品である。昔から「三脚は重ければ重いほどよい」とか、「重いものをえらべ」という人が多い。しかし、実際には重い三脚がすべていいわけではない。軽くてもよいものはあり、重くても使いものにならないものもある。屋外で使うのだったら、安定さえよければ目方は軽ければ軽いほどよい。カメラ用の三脚は、内外の製品が山ほどある。しかし、大判カメラ用として選ぶなら、TVカメラ用の三脚がいい。とくに5x7判や8x10判だったら、雲台(レベラー)やクイックシューも含めてTV用がいい。種類も豊富にある。使用カメラの重さで分類されているので、その中から5kg〜6kgから10kg前後用の比較的軽量級のものを選ぶとよい。安定性がよく、使い勝手も優れているうえ軽い。一度使えば、その使い勝手のよさにびっくりするだろう。



大判レンズの選択法


大判カメラには専用レンズがない


 大判カメラには、35mm判や中判カメラのように専用レンズがない。大判カメラのメーカーで、レンズやシャッターを作っているところはない。すべての大判カメラが、どこのどんな銘柄の大判用レンズでも使うことができるのだ。カメラ本体への装着は、レンズボードと呼び、カメラ本体へ着脱可能なパネルにレンズを取り付けておき、そのボードごと行う。レンズボードは、カメラメーカーごとに異なる規格を採用しているので、銘柄の違うカメラの間では、必ずしも互換性はない。しかし、規格の違うレンズボードを抱え込むようになっている変換ボード(ダブルパネル)が用意されているので、それを使えば互換性が出てくる。現在、日本で最も多く使われているレンズボードはリンホフ規格である。大きさが適当で持ち運びに便利ということもあるが、互換性が大きなメリットになっている。すべてのレンズをリンホフボードに付けておき、リンホフ以外のカメラには変換ボードを付けておく。これで、自分のカメラに他人のレンズが、自分のレンズが他人のカメラにも取り付けられるようになるのである。


キメ手は焦点距離

 レンズには標準レンズ、広角レンズ、望遠レンズという分け方がある。一般には、レンズの焦点距離が画面の対角線の長さに等しいものを標準レンズ(画角は50度前後)、それよりも焦点距離の短い(画角の大きい)ものを広角レンズ、長い(画角の小さい)ものを望遠レンズと呼んでいる。画面の対角線長は、4x5判では約155mm。5x7判は約210mm。8x10判は300mmなので、4x5判は焦点距離150ミり、5x7判は210mm、8x10判は300mmを、それぞれの標準レンズとしており、それよりも焦点距離が短いものを広角レンズ、長いレンズを望遠レンズと呼んでいる。


レンズの明るさ

 レンズ固有の明るさは、開放F値または略して開放値ともいい、レンズ名、焦点距離とともにF○○とレンズの鏡胴部分に記してある。F値というのは、絞り値のことで正確にはFナンバーのこと。絞りは、いうまでもなく絞り穴の大きさを調節して、フィルム面に到達する光の量を調節するためのものである。Fナンバーの数字の根拠は、絞り穴の直径をレンズの焦点距離で割ったもの。たとえば焦点距離が800ミりで、絞り穴の直径が100mmだとすると、Fナンバーは800分の100、つまり8分の1で、分母の8だけを使ってF8と表示する。同じレンズのF16の絞り穴の直径は、800 16=50で、50ミりとなる。ちなみに、F8のときの絞り穴の面積は、F16のときの面積の4倍である。つまり、2絞り絞ると穴の面積は2分の1の2分の1、つまり4分の1になるのである。同じF値どうしでは焦点距離の長いレンズほど絞り穴は大きく、短いレンズほど小さい。また、同じ焦点距離のレンズでは、明るいレンズほど開放時の絞り穴が大きくなるわけだ。なお、この数値(F値)は、無限遠の被写体に対する光軸上での計算値。実際にはレンズの透過効率、周辺光量、撮影倍率などの諸ファクターを考慮する必要がある。


フイルムに写る被写体の大きさ

 同じ被写体を、同じ位置から撮影すると、焦点距離の長いレンズほど被写体が大きく、焦点距離の短いレンズほど小さく写る。この度合いはレンズの焦点距離に比例する。また、同じ焦点距離のレンズで撮った被写体像の大きさは、カメラの画面サイズに関係なく同じである。たとえば、35mm判カメラに 600mmレンズを付けて撮った被写体の大きさと、4x5判カメラに600mmレンズを付けて撮った場合と像の大きさはまったく同じである。違うのは写る範囲。4x5判のフィルムには35mm判の10数倍も広い範囲が写る。8x10判は、さらにその4倍も広い範囲が同じ密度で写るのである。大判カメラのすごさの一つは、この高密度画面である。たとえば、35mm判の21mm超広角レンズの画角92度と同じ範囲を、8x10判で写せるレンズは150mmである。同じ被写体を、同じ位置から21mmレンズと150mmレンズで撮り分けた写真を画質で比較したとき、その差は想像以上に大きい。このように大判カメラでは、常に35mm判カメラの望遠または超望遠レンズと呼ばれている焦点距離域のレンズのみを使うのである。


標準レンズが望遠・広角に変身する

 5x7判の標準レンズになっている210mmレンズ(画角53度)を4x5判カメラに装着すると、35mm判では60mmレンズの画角に相当する中望遠レンズになり、8x10判カメラに装着すると、35mm判では30mmレンズの画角に相当する広角レンズになる。このように、同じレンズでも使うカメラの画面サイズが変わると、写る範囲が変わり、用途や分類も変わる。したがって、焦点距離によるレンズ選びは、使用するカメラの画面サイズを基本にして考えなければならない。


イメージサークルと包括角度

 カメラは撮影レンズの光軸に直角に交わる平面に円形の像を結ぶようになっており、像は周辺部にゆくほど鮮鋭度と光量が低下する。イメージサークルは、無限遠にある被写体を写したときの良像の範囲の大きさを直径で表したものだが、カタログなどでは絞りをF22に絞ったときの大きさをmmで表示することになっている。包括角度はカバーリングパワーともいい、それぞれのレンズ固有の数値。レンズの像主点から見て、イメージサークルをカバーする見込み角のことで、角度で表示する。イメージサークルと同じように、絞り値によって若干変化する。イメージサークルはピントを合わせる被写体の距離が近いほど大きく、遠いほど小さくなるが、包括角度は変化しない。レンズは、使うカメラの画面対角線長より大きいイメージサークルをもつたレンズを選ぶのが原則である。イメージサークルは大きければ大きいほど、アオリの自由度も大きくなる。反対にイメージサークルの小さいレンズを選ぶと、画面にケラレ(光量不足で何も写らない部分)ができるし、アオリも使うことができない。


フランジバック

 無限遠にピントを合わせたときの、レンズをカメラまたはレンズボードへ取り付ける面(フランジ、鍔)からピントグラス面までの距離のことで、フランジ・フォーカス・ディスタンス、またはフランジ焦点距離ともいい、mmで表示する。また、カメラではレンズ取り付け面からピントグラスまでの距離をさし、蛇腹を最も長く伸ばしたときの寸法(最大伸長)と、いちばん縮めたときの寸法をmmで表示する。ここで注意したいのは、カメラの最大伸長よりもフランジバックの長いレンズは、そのカメラに普通の装着方法で付けてもピントを合わせることはできない。通常の撮影をするためには、ピント合わせのために必要な繰り出し量として、レンズの焦点距離の10%以上の余裕が必要なのである。また、蛇腹をいちばん縮めたときの寸法よりも、短いフランジバックのレンズも、通常の装着方法では撮影することができない。


フランジパックを短くしたレンズ

 通常のレンズはレンズの主点(光学的中心)がシャッターの中心(絞りのあるあたり)付近にある。フランジは、それより後方にあるため、フランジバックは焦点距離より10数ミり短いのがふつうである。ところが、フランジバックを焦点距離の60〜70%前後に短縮させたレンズがある。Tシリーズなどと呼んでいるテレタイプのレンズだ。このレンズだと、たとえば蛇腹最大伸長が400mmしかないリンホフマスターテヒニカでも、焦点距離500mmの望遠レンズで撮影ができる。テレタイプは、このように蛇腹の最大伸長で制約をうけやすいフィールドタイプのカメラで、とくに威力を発揮する。なかでも、前群レンズとシャッターを共用する後群レンズ交換方式を採用しているニッコール・Tシリーズレンズ群は、優れたコスト・パフォーマンスと携帯性のよさを実現したレンズといえる。



シャッターと露出法


大判レンズ用シャッター

 大判カメラ用レンズが採用しているシャッターは、いわゆるメカニカルシャターでレンズシャッターとも呼んでいる。レンズメーカーではシャッターを作っていないので、シャッターメーカーから供給を受け、レンズを組み込んで販売している。現在市販されている大判用レンズは、国産、輸入品合わせて170種類以上あるが、シャッターはほとんどがコパル社製である。レンズシャッターは、光軸の中心に同心円的等間隔に配置された5枚のシャッター羽根が、セクターリングの往復回転で瞬間的に中央から開いて中央に閉じるようになっている。したがって、小型カメラが採用しているフォーカルプレーン式シャッターのように、画面の上下または左右にタイムラグが生じることもなく、画面全体が同時に露光される。また、全シャッター速度に対してストロボを同調させることができる。


シャッターの種類

 現在、一般的な大判カメラ用レンズに使われているシャッターは、小さいほうから0番(0♯、ゼロバン)、1番(1♯、イチバン)、3番(3♯、サンバン)の3種類である。慣れると大きさで容易に見分けられるが、もう一つの見分け方はシャッター速度の表示を見るとよい。0番は500分の1秒、1番は250分の1秒、3番は125分の1秒が最高速度になっている。焦点距離が長いレンズほど、また、明るいレンズほど大きいシャッターを使用する。


シャツター各部の名称

  1. シャッター速度リング、シャッター速度指標
    シャッター速度リングは、シャッター速度が表示されているリング。指先で回転させ、必要な速度を示す数字を、シャッター速度指標に合わせる。なお、シャッターの下側にも同じような速度表示と指標があり、そこでも合わせることができる。シャッター速度リングは、クリック・ストップ式になっているので正確に合わせることが大切。構造上、中間の速度はない。
  2. 絞り日盛り、絞り指標
    絞りを操作するためのもので、シャッターの上側と下側にある。絞り値の設定は絞り目盛りを指先で動かして行う。
  3. 3)プレスフォーカスレバー
    シャッターを開閉するためのレバー。左右にスライドさせて行う。開くのはピント合わせと、構図を決めるため。
  4. 4)セットレバー
    シャッターをセットするためのレバー。セットした状態で保管すると、スプリングが弱くなる恐れがあるので、必ず切った状態にしておく。
  5. 5)レリーズレバー、レリーズソケット
    レリーズレバーを押し下げるとシャッターが切れる。レリーズソケットはシャッターを切るためのレリーズを取り付けるソケット。
  6. 6)シンクロソケット
    シンクロコードを差し込むためのソケット。
  7. 7)締め付けリング
    レンズをレンズボードに取り付けるためのリングネジ。


シャッターの操作

 実際の撮影時には、次のような手順を守るようにすると、シャッターを壊したり、撮影操作の思いがけない失敗を防ぐことができる。カメラを三脚、カメラスタンドなどへ設置し、レリーズを装着したのち、次のような手順で操作する。

  1. レンズの絞り値を開放に設定する。
  2. プレスフォーカスレバーを操作してシャッターを開ける。
  3. ピントグラスに映った被写体像を見ながら構図を決め、ルーペを使ってピントの調節や、必要に応じてアオリ操作を行う。露出計を使って測光し、露出値を決める。
  4. レンズに撮影絞り値を設定する。
  5. プレスフォーカスレバーで、シャッターを閉じる。
  6. シャッター速度を設定する。セットレバーでシャッターをセットし、空シャツ一夕ーを切る動作を2〜3回線り返してから、シャッターをセットする。
  7. フィルムホルダーをカメラに装てんし、引きブタを引き抜く。
  8. レリーズを使ってシャッターを切る。
  9. 引きブタをフィルムホルダーに戻し、ホルダーをカメラから抜き取る。
  10. プレスフォーカスレバーでシャッターを開け、撮影した画面が正しかったかどうかの確認をする。とくにカメラの向き、各部の不用意な動きなどの有無を慎重にチェックする。

以上で撮影は終了する。このなかで6.の「空シャッターを切る」動作はとくに重要である。初心者によくあるシャッターの閉め忘れによる失敗。シャッターのセット忘れ、シャッター速度の設定ミスなどを、この事前チェックで防止できる。また、とくに低温時のシャッター作動をスムーズにするという効果もある。


露出の決定

 小型カメラで露出計を搭載していないカメラは見当たらないが、大判カメラでは露出計を搭載した機種はない。したがって、露出値を決めるためには自分で被写体の明るさを測らなければならない。ふつう被写体の明るさを測る方法は、二つある。一つは、被写体からカメラに向かって反射してくる光を測る方法で、反射光式露出計を使う。もう一つは、被写体にあたっている光を測る方法で、入射光式の露出計を使う。反射光式は、とくに遠いところにある被写体の撮影に有利。また、被写体の狭い部分を測る方式のスポットメーターは、被写体の輝度を測ることができる。入射光式は、とくに被写体がカメラから近いところにあるときに有利である。

反射光式露出計では、雪景色などのように、とくに反射率の高い被写体のときには露出不足になる露出値を表示する。逆に、反射率の低い、黒っぼい被写体に対しては露出過度になる露出値を表示する。したがって、被写体の反射率が高いときは、その高さに応じプラス補正をし、反射率の低い被写体のときにはマイナス補正をしないと、適正露出の写真を撮ることはできない。入射光式露出計の場合は、反射光式の逆になる。つまり、反射率の高い被写体では露出過度になる露出値を示し、反射率の低い被写体では露出不足の露出値を表示するので、どちらの場合も補正しないと適正露出は得られない。



大判用フィルムの選択法


フイルムの種類

 大判カメラで使うシートフィルムはすべてプロ用のフィルムで、カラーリバーサル、カラーネガ、モノクロームとも非常に多くの種類がある。初めて大判カメラを使うとしたら、今までいちばん使い慣れている銘柄と同じ銘柄のシートフィルムを選ぶようにするとよいだろう。もし、それができないようだったら、友人や先輩の意見を参考にして1種類を選び、それを常用フィルムにするとよい。最初から感度や銘柄の違うフィルムを混用することは間違いを起こしやすい。絶対にやめたほうが賢明だ。


カラーかモノクロか

 カラーを選ぶのならリバーサルをすすめたい。カラーリバーサル・フィルムは、カラーネガ・フィルムに比べると露出に対するラチチュード(寛容度)が非常に狭い。たとえば、カラーネガ・フィルムは露出が2絞り相当過度でも、1絞り相当不足でも、ほとんど見分けのつかない美しいカラープリントを作ることができる。非常に使いやすいフィルムなのである。しかし、カラーリバーサルは2分の1絞り露出が変わっても、その違いを明確に写し出すフィルムである。極めて厳密に露出値を設定して撮影することが要求される、非常に難しいフィルムなのである。にもかかわらずカラーリバーサル・フィルムをすすめるのは、自分のイメージどおりの色彩表現がしやすいことと、露出の難しさを克服し、適正値で撮影できたときの喜びが大きいからである。大判で撮るモノクロ写真は、階調豊かでシャープな印画をフィルム現像からプリントまで、すべて自分で処理することができるという魅力があり、カラーとは違う大きな満足感が得られる。最近、大判愛好者のなかの広い年齢層の問で、ファインプリントを指向する人が増えつつある。8x10判カメラで撮ると、引伸機を使わないでも六切プリントが密着で 作れる。この魅力は大きい。


カラーフィルムの現像

 カラーリバーサル・フィルムは、もともと雑誌のカラーページを撮るカメラマンや、広告写真の分野のプロが使っているフィルムである。したがって現在でも、このフィルムの現像処理はプロラボが行っている。プロラボというと、プロだけが行くところのように思う人があるが、決してそうではない。だれが撮ったフィルムでも、だれが行っても受け付けてくれて、しかも1〜2時間で仕上げてくれる。プロラボは、プロが使うフィルムを現像するところなのである。初心者にとつて、リバーサルフィルムに対する露出の適否の判断は、非常に難しい。こんなときは現像上がりのフィルムを受けとるときに、ラボの人のアドバイスを受けるとよい。毎日、非常に多くのフィルムを見ている人たちだから、適切な助言が期待できる。なお、フィルムはできるだけ大手のプロラボで購入することだ。カラーフィルムは、同じ銘柄でも品質にかなり偏りがある。しかも、フィルムは「なまもの」といっているように非常に変質しやすいものである。大手のプロラボでは、自分の顧客のために常に良質のフィルムをそろえている。しかも管理もよい。さらに、それぞれの乳剤番号別にテスト撮影を行い、その結果を店頭 で、乳剤情報としてだれでも手に入れることができる。


インスタント・フィルムは上達の近道

 15〜90秒という非常に短い時間内に印画の得られるインスタント・フィルムは、逆さに映っているピントグラス像での画面構成や、アオリ、ピント、ライティングの効果などをチェックするのに、極めて有効である。とくに、これらに不慣れな初心者には欠かせないツールである。フィルムは、カラーと黒白のプリントで、8〜10枚を連続して撮れるパック式と1枚撮りとがある。パック式はポラロイド社と富士フイルムから4x5判が、1枚撮りは4x5判と8x10判がポラロイド社から販売されている。現像方式はすべて引きはがし式(ピールアパート式)で、パック式の4x5判は、すべての4x5判カメラに使える国際規格の専用ホルダー、ポラロイドの550型か、富士のPA-45型に装てんして使用する。また、4x5判の画面全体をカバーすることはできないが、73x95mmの部分が撮れるフィルムと、専用ホルダー。ポラロイドの405型と富士のPA-145型もある。8x10判用フィルムは800シリーズで黒白とカラープリントのほか、OHP投影に使えるカラーのトランスペアレンシーが得られるものもある。日中でも装てんできる専用のフィルムホルダーを使って撮影し、現像処理は専用のプロセッサーで行う。電動式と手動式があ る。



大判カメラの基礎知識


大判カメラ

 撮影できる画面サイズの相対的な比較による分類法なので、とくに定義はない。時代によって変化したカメラ・フォーマットにしたがって、分類法も変化した。今日では、35mmフィルムを使うカメラを小型、ブローニーフィルムを使うカメラを中型または中判、シートフィルムを使うカメラを大型または大判カメラと呼んでいる。


アオリ

 フィルムの中心へ、撮影レンズの光軸が垂直に交わる...というカメラの基本的なパターンを変えること、または変えるカメラ操作のことを言う。レンズがある前枠部、ピントグラスのある後枠部をそれぞれ上下、左右にずらしたり、前後、左右に傾けたりして結像効果を変える。普通の大判カメラには、アオリ機構を搭載していない機種はない。各アオリには、次のような名称と効果がある。

ライズ 上方向へのずらし 前枠のライズは、カメラの向きを変えないで、写る範囲を上方向へ移動させることができる。後枠のライズは、カメラの向きを変えないで、写る範囲を下方向へ移動させることができる。
フォール 下方向へのずらし 前枠のフォールは、カメラの向きを変えないで、写る範囲を下方向へ移動させることができる。後枠のフォールは、カメラの向きを変えないで、写る範囲を上方向へ移動させることができる。
シフト 左または右方向へのずらし 前枠の右方向へのシフトと、後枠の左方向へのシフトは、カメラの向きを変えないで、写る範囲を右方向へ移動させることができる。 前枠の左方向へのシフトと、後枠の右方向へのシフトは、カメラの向きを変えないで、写る範囲を左方向へ移動させることができる。
スイング 左または右方向への向き変え 前枠のスイングは、被写体の形を変えないで、ピントの合う垂直面を手前から奥に向かって斜めに設定することができる。後枠のスイングは、前枠のときと同じような効果を待られるが、被写体の形が変わる。被写体の形を変え、垂直面の奥行き感を強めたり、弱めたりすることができる。
チルト 上または下方向への向き変え 前枠のチルトは、被写体の形を変えないで、ピントの合う水平面を手前から奥へ向かって斜めに設定することができる。 後枠のチルトは、前枠のときと同じような効果を得られるが、被写体の形が変わる。被写体の形を変え、水平面の奥行き感を強めたり弱めたりする。


べ口ーズファクターと実効F値

 ベローズファクターは、近接撮影のときに必要な露出補正値のこと。近接鼓影では、レンズとフィルムの間隔が通常の撮影時より大きくなるため、像面照度(フィルム面を照らす明るさ)が低下するので、露出値を補正しなければならない。蛇腹(ベローズ)の繰り出し量に関係のあるところから蛇腹指数ともいう。大判カメラは、どのレンズでも焦点距離には関係なく、最大伸長まで繰り出すことができる。したがって、ベローズファクターを考慮しなければならなくなっても、それに気づかないことがある。一般的に露出補正が必要になるのは、レンズから被写体までの距離が、撮影レンズの焦点距離の8倍より近くなったとき。厳密には10倍近くになったら、注意したほうがよい。また、これはカメラ側でいうと、そのレンズで無限遠を写すときの蛇腹の伸び量から、レンズの焦点距離の10分の1以上繰り出したときである。このとき、露出補正が必要になるということは、そのレンズのF値(絞り数字)がそのまま使えなくなる(有効でなくなる)ということ。実際の数値は、つぎの数式で知ることができる。

実効F値 = レンズの表示F値 x レンズとフィルム間の距離 / レンズの焦点距離

たとえば、210mmレンズを使って、レンズとフィルムの間隔が300mmになったときの絞り値F11の時は、11x300/210=15.71で、実際にはF16に近くなったことが分かる(表参照)。また露出倍数は、(蛇腹の伸び/2)+(レンズの焦点距離/2)または、(蛇腹の伸び-レンズの焦点距離)/2で計算することができる。 なお、これは通常の測光法のときだけ。ピント面で測るTTL測光では、露出補正を加味した数値が表示される。


フロラボ用語

 プロラボやプロカメラマンによく使われる略語、専門語に、次のようなものがある。(順不同)

ぞうかん(増感)
現像処理で感度を上げること。上げ幅を絞り値で1絞り増感とか2分の1絞り(半絞り)増感、またはプラス1(1絞り増感)、プラス2分の1(半絞り増感)というように指定する。増感現像は、露光不足に撮影したフィルムを救済するときなどに行う。プラス現像、プッシュ、押すともいう。

げんかん(滅感)
増感の反対語。現像処理で感度を下げること。1絞り減感とかマイナス1(絞り)現像と指定する。マイナス現像とも言う。

ぱんき(番記)
現像したフィルムに、ホルダーなどの番号を書くこと。

とぶ
露光過度でディテールがなくなってしまったことをとんだという。

つぶれる
とぶの反対語。露出不足でディテールがなくなってしまうこと。

ほりゅう(保留)
現像を止めておくこと。文字どおり保留。

どうぷり
現像してプリントもすること。同時プリントの略。

ノーマル
標準現像のこと。

ポラ
ポラロイドフィルムのこと。インスタントフィルムを指すこともある。

ダイレクト
ポジのカラーフィルムからインターネガを作らないで直接、印画紙に焼きつけること。ポジ・ポジプリントとか、ネガレス・プリントともいう。

インターネガ
ポジのカラーフィルムからプリントを作るために作る中間ネガのこと。専用カラーネガフィルムを使用する。

かためんてすと(片面テスト)
フィルムホルダーの片面に入れたフィルムをテスト現像すること。

ほんばん(本番)
テスト現像の反対語。



大判カメラについての情報


 大判写真の世界は奥が深い。分かっているつもりでも結構、戸惑うことが多く、それがまた楽しさや面白さを深めてくれるようである。この分野には、参考になる書籍類が少ないが、次のものを紹介したい。書店にないことが多いので、直接、出版社へ注文するか、書店に頼んで取り寄せてもらうとよい。

中型・大型カメラ入門 日本カメラ社 中判、大判カメラの基礎講座、壊種別ガイド、被写体別撮影テクニックなど
大判写真入門 玉田勇著、写真工業出版社 本格的な入門書大判カメラテクニックの基礎から応用まで、分かりやすく解説してある。各種の資料も。カラー口絵はカナディアン・ロッキー
大型カメラの使い方 書店にはない。プロラボ、プロショップで買える。


そのほか、大判写真を専門に教える写真教室が東京と大阪にある。詳しいことは、〒156-0052 東京都世田谷区経堂4-30-3-302 日本大判写真塾・事務局へ問い合わせるとよい。また、日本大判写真塾では、大判だけの撮影会「玉田勇ワークショップ」を随時、内外で行っている。興味のある人は前記の事務局へ住所・氏名を知らせておくと、そのつど知らせてくれる。